分野別!探究授業の「テーマ設定」、方法から事例まで徹底解説
世界情勢の変化やグローバル化、AIの発達が進み、現代社会は目まぐるしく変化を続けています。そのような世界において、次々と生まれる課題に対し自ら考え、解決にあたっていく力を養うために注目されているのが「探究授業」です。
今回は、探究授業のファーストステップである「テーマ・課題設定」について、その方法から事例まで徹底解説します!
探究授業とは?
そもそも、探究授業とはどのようなものなのでしょうか?文部科学省の定義によると、探究授業とは、「探究の見方・考え方を働かせ,横断的・総合的な学習を行うことを通して,自己の在り方生き方を考えながら,よりよく課題を発見し解決していくための資質・能力を次のとおり育成することを目指す」ものだとされています。
また、具体的に探究授業での育成を期待される能力が3つあります。1つ目は「知識及び技能」,2つ目は身に着けた「知識及び技能」をどう活用するかを考えるためにも欠かせない「思考力,判断力,表現力等」,最後に課題解決に対して主体的かつ共働的に取り組む際にも必要な「学びに向かう力,人間性等」です。これらの能力を育成するために、文部科学省の定める「探究学習の過程」が参考になります。
《参照》
高等学校学習指導要領(平成30年告示)解説 総合的な探究の時間編/文部科学省
https://www.mext.go.jp/component/a_menu/education/micro_detail/__icsFiles/afieldfile/2019/11/22/1407196_21_1_1_2.pdf
テーマ設定の方法
探究授業の重要性がますます注目されていますが、探究授業を行うにあたっての最初のステップが「テーマの設定」です。
設定するテーマによって生徒の学びのプロセスも変化するため、テーマの設定は非常に重要なフェーズであるといえます。そんなテーマ設定ですが、実は日本の約4割もの学校がテーマ設定に課題を感じているというデータがあります。
重要であるからこそハードルが高いテーマ設定にはいくつかの方法があり、文部科学省では以下の方法が紹介されています。
①体験活動を対比して課題を設定する
②資料を比較して課題を設定する
③グラフの推移を予測して課題を設定する
④対象へのあこがれから課題を設定する
⑤KJ法的な手法で課題を設定する ※KJ法:カードや付箋を活用した思考整理法
⑥体験から発見した問題を序列化して課題を設定する
以上の6つに共通する点として、「生徒が自らの気付きを基に課題・テーマを設定している」ことが挙げられるでしょう。生徒の積極性や自主性を養う探究授業において、生徒自らの興味・関心を軸とすることが重要なのです。
《参照》
次期学習指導要領の解説から読み解く 「探究」と、データで見る学校現場の状況/ベネッセ
https://benesse.jp/berd/up_images/magazine/VIEW21_kou_2018_08_genjouhaaku.pdf
第1編 ― 第2章 今、求められる力を高めるための学習指導/文部科学省
https://www.mext.go.jp/component/a_menu/education/detail/__icsFiles/afieldfile/2011/02/17/1300464_3.pdf#:~:text=1%EF%BC%8E%E8%AA%B2%E9%A1%8C%E3%81%AE%E8%A8%AD%E5%AE%9A%20%E7%B7%8F%E5%90%88
分野別!テーマ設定のポイントと事例
ここで、具体的にどのようなテーマの設定が考えられるか、3つのテーマ分野に分けてご紹介します。探究授業のテーマを、自然科学分野、社会科学分野、人文科学分野の3つに分けてご紹介します。
①自然科学分野
この分野のテーマでは実験やデータの分析などを行う授業が多くあります。また、こうした探究を通して自然科学分野の知識だけで無く、社会への活かし方も考えていきます。
例えば、「エネルギーの変換効率を探る」というテーマでは、太陽電池や風力発電の仕組みを学び、効率を高める方法を実験で検証する事でエネルギー問題の解決に向けた取り組みなどについても学ぶことができます。
◎事例(自然科学✖️国際交流✖️探究) さくらサイエンスプログラム
また、こうした自然科学分野の探究を国際的に行うプログラムとして、「国際青少年サイエンス交流事業(さくらサイエンスプログラム)」があります。これは、産学官の緊密な連携により、諸外国・地域の青少年の我が国への招へい等を通じて、我が国の青少年との科学技術分野の交流を行う事業として注目をあびています。
《参照》
令和6年度「国際青少年サイエンス交流事業」(「さくらサイエンスプログラム」)
基本方針/科学技術振興機構 さくらサイエンスプログラム推進本部
https://ssp.jst.go.jp/media/files/pdf/outline/basicpolicy2024.pdf
またオンラインでの国際交流授業の中での時間を活用して海外生徒と共にサイエンスプロジェクトを進めることもできます。海外生徒と少人数のチームに別れ、交流の時間を使ってテーマ設定から実験・検証方法の相談、成果の発表などを行います。
また、プログラミングツールを用いて、海外生徒とロボットやウェブサイトなどを協働制作することも可能です。
②社会科学分野
社会課題の現状や背景について知り、課題解決のプロセスを考える授業が多くあるのがこの分野です。例えば、「地域活性化と観光戦略」というテーマで、地元の観光資源を活かした町おこしのプランを考えるなどの授業設計が考えられます。
◎事例(社会科学✖️国際交流✖️探究)世界青年の船事業
このような社会課題などに対して、海外生徒と交流しディスカッション行いながら考えを深めるプロジェクトとして、「世界青年の船」があります。
これは内閣府青年国際交流事業として、18〜30歳の青年約240人が世界各地から集まり、船内で1ヶ月共同生活をしながらディスカッションや文化交流等を行い、コミュニケーション能力や課題解決能力、リーダーシップ等の育成を図る事業です。
《参照》
世界青年の船/日本青年国際交流機構
https://www.iyeo.or.jp/caoprogram-2/swy/
③人文科学分野
各地の文化・伝統を知り、そこに隠れた課題解決を図る授業が一例です。例えば、「日本の伝統文化の継承」をテーマとして、茶道や書道など伝統文化の若者への普及策を企画する授業などが考えられるでしょう。
◎事例(社会科学✖️国際交流✖️探究)₋日韓みらいファクトリーアワード₋
また、「日韓みらいファクトリーアワード」というプログラムでは、「日韓のときめく未来」を実現するためのアイデアを韓国の学生と共有し合い、また、文化交流企画を行って双方の歴史的・文化的背景への知見を深めることができます。
《参照》
日韓みらいファクトリーフォーラム2024/筑波大学
https://miraefactory.jp/#feature
With The Worldの事例紹介
このように、探究授業のテーマ設定には3つの分野が考えられ、そのそれぞれにおいて海外との交流も活発に行われています。ここで、With The Worldのプログラムを活かして探究授業での活動をグローバルに発展させていく授業が行われた事例を3つのテーマ分野ごとにご紹介します。
社会科学分野〜関西学院高等部 グローバルスタディの事例〜
社会科学分野では2023年度の関西学院高等部のグローバルスタディの事例をご紹介します。このプロジェクトでは、「グローバル(ローカル)な視点で気候変動を捉え、自分たちにできることをしよう」をテーマに、生徒主体で活動を進め、気候変動に関わる問題に対しての知識を得てアクションを起こすことが目標になっています。
プログラムでは、海外生徒と共に気候変動問題の現状について学び、気候変動問題解決へのアクションプランをディスカッションしてSNSで発信するところまで行います。SNSでの発信というアウトプットまで行うことで、自分事として考える事が難しい規模の大きな社会問題に対しても、主体的に解決に向けて取り組む姿勢を養います。
人文科学分野〜兵庫県立明石商業高等学校の事例(修学旅行 事後研修)〜
最後に、人文科学分野では兵庫県立明石商業高等学校でのオンライン国際交流の事例をご紹介します。当プログラムでは、明石商業高校の生徒が修学旅行先である沖縄の歴史や文化などについて海外生徒に英語で報告するものになっています。
また同時に文化交流を通して相手国の文化についての理解も深めます。修学旅行という貴重な学びの機会を「修学旅行に行って終わり」にするのではなく、前提知識の少ない海外生徒にも分かるように歴史や文化を説明することで学びをより深めます。事後研修があることで、修学旅行の学びをより有意義に応用していくことが期待できます。
まとめ
このように探究授業には様々なテーマがあり、テーマの探求を通じて世界と繫がることも可能となっています。
大きく変化を続ける世界で活躍していくためには、自ら問いを設定し、その探究のために様々なバックグラウンドを持つ人々と協働していくことが必要不可欠でしょう。
私達、株式会社With The Worldは世界で起きている社会問題について、多様なバックグラウンドをもつ生徒と探究し、世界との繋がりを創る授業を多数提供しています。
海外の生徒と繫がり、世界についての学びを深めていった事例に関しては以下も併せてご覧ください!
《参照》
金蘭会高等学校 オンライン国際交流レポート/With The World