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「オンラインで海外の同世代とつながる! 世界中の子どもが交流できる教育環境を。」関西広域連合様に掲載いただきました。

「オンラインで海外の同世代とつながる! 世界中の子どもが交流できる教育環境を。」関西広域連合

オンラインで海外の同世代とつながる!
世界中の子どもが交流できる教育環境を。

スラム街の子どもたちとの出会いから実現したい未来への挑戦がはじまった。

新型コロナウイルスの収束の見通しが立たないなか、オンラインを活用した国際交流のニーズや学びの可能性が広がっている。そうした教育の現場で最近注目を浴びる企業がある。リアルの「海外スタディーツアー」と「オンライン国際交流授業」のプログラムを提供する株式会社With The Worldだ。このプログラムでは「持続可能な開発目標(SDGs)」に即した社会課題をテーマに、PBL型(問題解決型)授業などのカリキュラムをおこなう。

「世界が抱えている社会問題に対して、さまざまな国の同世代の学生と議論し合うことで社会問題をより身近に捉え、互いの国が抱えている問題に目を向けることをめざしています」。そう語る代表取締役の五十嵐駿太さんは、学生時代に食品ロスや貧困などの社会問題を研究しており、海外の実情を知るためにフィリピンに渡航してNPO活動などに参加。スラム街の子どもたちにテニスを教えたが、学校に行けない子どもたちは学ぶことに意欲的だと肌で感じた。この試みは評判になり、学校へ通う子どもたちも来るようになる。しかし彼らは同じ地域のスラム街の状況を知らない。存在は知っていても何が原因でスラムとなり、どんな課題を内包しているかまで考えたことがなかったという。

それはきっと日本でも同じだ。社会問題に対する無関心を打破し、自分の住む地域と向き合う。それが子どもの未来を広げるための教育には必要だ。そこから「世界の同年代をオンラインでつなぐことで、双方の質問などを通じて相手国や自国の課題意識に視点が向くきっかけになるのではないか」と考えつく。大学卒業後は株式会社パソナグループに入社、6つの新規事業立上げに参画し、2018年にこの夢をかなえるために起業した。

 

オンラインで海外に住む同世代と顔を合わせ、議論が生まれる体験を。

今まで世界60ヵ国410校、約5000人以上の小学生から社会人までをつなげてきたが、起業時は新規開拓に苦労した。海外交流に熱心な学校はすでに大手の同業者と契約しているからだ。そこで五十嵐さんが選択したのは、営業の基本であるテレアポ。「前職で新規事業をゼロから立ちあげた経験が活かされました」。またインドネシア、ミャンマー、フィリピンなどの海外連携校に関しては、飛び込み訪問し自分の足で開拓した。

立ちあげた2018年は関西学院高等部の一校のみ。それが22年の2月の時点では100校まで増えた。その要因は大きくふたつ。ひとつはコロナ禍で海外研修や留学が厳しくなった学校が代替案として選択したこと。もうひとつは国が推奨する「GIGAスクール構想」のもと、ICT活用による海外交流が求められたこと。
海外ネットワークから口コミにくわえ、当時「オンライン国際交流」をキーワードに掲げた企業は少なく、検索すれば同社がトップで出る状態であった。こうした要因が重なり、問い合わせが一気に増えた。今までは私立の学校が中心だったが、実績を重ね最近では公立の学校にも普及しはじめている。

同社のプログラムはリピート率も高い。その理由はトータルサポートにある。海外校とのコミュニケーションから先生のニーズに対応したプログラム作成、実際の授業の運営・ファシリテーション、成績評価サポートまで、国際交流授業に関する業務をすべておこない、実地海外研修もコーディネートする。日本側では同社スタッフと大学インターン生が運営・評価を担当し、現場の教員の負担を軽減。

 

未来に向けて異文化理解を深める必要性 世界中の学校がつながるプラットフォームへ。

この事業の重要なキーワードとして、「同年代」をあげる五十嵐さん。「これまでのオンライン海外交流で多いのは、海外の先生や大学生とつなぐスタイル。しかし同年代であれば関心ごとも近く、それが英語のハードルを下げます」。事前にオンラインで社会問題について検討し、海外でフィールドワークまでおこなうところまで実践している。

最近では「スラム街に行こう」というオンラインツアーを立ちあげた。これまでの活動から世界各地のNGOやNPOと連携を深めてきた、五十嵐さんならではのプログラムで、興味や関心はあっても自分ごとにするのは難しいSDGsを、現実を見て話すことで可能にする。

いずれは自社のプログラムを世界中の学校に導入したい。海外の国同士をつなげたいとも。「政治的な対立がある国同士でも、同年代の個人的な感想を聞くことで国に対するイメージも変わってきます。その結果として将来、国と国の距離が近くなればいい」。そして世界中の子どもたちが、経済格差によらず国際交流ができる教育環境をつくることを目標とする。「文化の異なる相手と同じ課題に取り組み、考えを形にすること。それが未来の世界平和に繋がる第一歩だと考えています」

 

リアルに触れ、本当の国際貢献を学ぶ。

オンラインスタディツアーでは国ごとにテーマを設定。フィリピンはゴミ山で暮らす子どもたちと「幸せ・豊かさ」を、インドネシアは伝統と発展が織り交ざるバリ島の子どもたちと「現代化と伝統文化」を、ザンビアは元ストリートチルドレンとの交流から「教育の必要性」について考える。このツアーで得た収益はNPOに入る。そんな「新たな寄付のしくみ」をつくり、ザンビアでは廃墟となった養鶏所を改築して、HIVの孤児を受け入れる学校にするという。「生徒に学んで欲しいのは寄付したお金がその先どこにわたり、誰がどういう風にハッピーになるかというところまで知ること。そこまで学んでこそ本当の国際貢献だといえます」

 

英語教師をめざす人のトレーニングの場に。

With The Worldでは大学生スタッフの活躍も見逃せない。オンライン国際交流でよくあるのが、日本人学生はシャイで最初は発言しづらいということ。それに対して、この場面では待つ、またある場面ではチャットを使ってサポートをするといった具合に、状況に応じて生徒が一歩踏み出せるように彼らが設定してくれるのだ。五十嵐さんは「今後、英語の授業でオンライン英会話が必須となる。それに向けて教師を目指す人が教壇に立つ前に、当社でインターンとしてトレーニングできないか」と画策している。大学と連携して、それが単位取得につながるような形をつくっていきたいという。

 

研究員からの一言

コロナ禍がもたらす負の影響は大きいが、一方で、様々な制約がある中から、既存の価値観の変化や不可能を可能にする創意工夫などの正の影響もみられ、同社の取組みは後者の一例といえる。
国際理解教育は、年限のある学生生活では待ったなしだが、オンラインによる国際交流は、交流する国や相手に対する想像力をより掻き立て、理解を深める契機になっている。また、現在の緊迫化した国際情勢において、同世代の若者による草の根的な国際交流は、SDGsにかかわる社会課題の共有にとどまらず、世界平和の一翼を担い得る人材の創出という期待にもつながる。
同社の理念「明日を明るい世界へ」が現実味を帯びてくるが、国内提携校がコロナ禍前の一桁台から現在は数十校に増え、交流国が60か国にのぼる現状は、同社の問題解決型国際交流プログラムに対する期待の高さをうかがわせる。
設立は2018年と新しいが、五十嵐さんは、大学時代から事業構想をあたため、株式会社パソナグループに入社後も複数の新規事業を手がけるなど起業への準備を周到に重ね、さらに、コロナ禍や国のGIGAスクール構想の追い風という時流や政策の潮流を読み、兵庫県・神戸市・国連プロジェクトサービス機関S3iイノベーション・ジャパンと連携する機会を活かすなど、着実にステップアップを重ねることで想定以上の実績をあげることに成功している。
(大阪産業経済リサーチ&デザインセンター 主任研究員・天野敏昭様)

 

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